日本のビジネスパーソンがとても頻繁に使う言葉の中に、いくつか、不思議な言葉があります。その代表が「お世話になっております」という挨拶の言葉です。僕も、毎日のように使っています。
文字の通りに考えると、「私はあなたに面倒を見てもらっています」「あなたは私の世話をしてくれています」という意味になります。だからあなたに感謝しています、という意味の挨拶です。これは普通に考えると、日常的に付き合いのある人に対して使う言葉だろうと思うでしょう。でも不思議なことに、これは初対面の人にも使います。特に電話では必ずと言っていいほど使います。Eメールでも使う人が多いです。
電話の例がわかりやすいです。
ある会社に、初めて電話をしたとしましょう。
相手:「もしもし、XXX社です」
あなた:「YYY社のZZZと申します」
相手:「お世話になっております」
たぶん95%、この挨拶が返ってきます。
Eメールでも、文章を「お世話になっております」から始める人はたくさんいます。
XXX様
お世話になっております。私はYYY社のZZZと申します。
こんな具合です。
より丁寧に言いたい場合、「たいへん」や「いつも」を最初につけます。初めて連絡を取る相手に対しても「いつもお世話になっております」と言います。
これを言われると、私は心の中で「いや、お世話なんてしてない。いつもなんて言ってるけどこの人に一度も会ったこともない」と、一瞬だけ思うときがあります。でもこれは挨拶なので、気にしないことにしています。
日本人の一般的な考え方として、「自分は多くの人の助けによって生きている」という感覚があります。ビジネスも、社会に支えられて成立している、と考える傾向があると思います。どんな人でも、たとえ初対面でも、自分たちを支えてくれる社会の一員だから感謝の言葉を伝えたいわけです。それが「お世話になっております」という挨拶なのだと僕は思っています。