外国人が日本人女性に「あなたは美しいですね」と言ったら、女性はどう答えるでしょうか。きっと70%ぐらいの確率で、こんな言葉が返ってくるでしょう。
「いいえ」「そんなことはありません」
本当に美しい女性も、そうでない女性も、似た反応になるはずです。
これが日本人同士だったら、確率は90%に上がります。いや、98%かな。
日本人男性に「あなたはハンサムだね」と言う場合も、ほとんど同じ展開になります。「いえ、とんでもない」など、否定の言葉が返ってくるでしょう。「頭がいいですね」「スタイルがいいですね」も、やはり否定の答えが多いでしょう。
これはつまり、日本人は自分自身を肯定的に見ないってこと?
僕はそう思いません。
他人から誉められたとき、表面的には否定する。これが日本の習慣だからです。
自信家の日本人はたくさんいます。「私は美しくない」と言っている女性も、心の中では「私は女優やモデルほどには美しくないが、友達の中では平均以上だ」と思っている人の方が多いです。ほとんどすべての人が自尊心を持っています。
誉められたときの「いいえ」が意味するのは、「誉めてくれたその言葉は嬉しく受け止めるが、私自身は、自分への満足を表明しない」ということです。
表明しない理由は、人によって違います。
Aさん:
「自分のことが好きじゃないから」
Bさん:
「自分は今後もっと良くなるはずで、今はまだ満足できる水準ではないから」
Cさん:
「自分に満足しているが、お誉めの言葉に同意すると、慢心した人間だと思われそうだから」
日本にはAさんのような人ばかりだと思っていませんか? 本当は、BさんもCさんもたくさんいます。特にCさんは、「いいえ」と言いながら、顔は笑みでいっぱいになっているでしょう。
外国の日本語学習者は、日本人と話したとき、高い確率で「日本語が上手ですね」と言われるでしょう。(※極論すれば、「コンニチワ」と発音するだけで、「うわー日本語が上手ですねえ」と誉める日本人もいます)。
日本語上級者の外国人を見ていると、語学力を誉められたとき、この答えを返す人が多いように思います。
「ありがとうございます。でも、まだまだです」。日本人の感性に合う、満点の答え方だと思います。