KIMONOは日本の象徴です。外国に行った日本人は、人々の注目を集めたいとき、しばしば着物を着ます。日本に帰ると、「着物姿で街を歩いたらたくさんの人に声をかけられて、写真を取りたい人の行列ができた」のような自慢をします。
ところが日本国内では、多くの人が着物に敬意を持っていますが、着ることは滅多にありません。誰もが、着物文化を守っていくべきだと思っていますが、自ら守るための努力はしていません。
ある調査によると着物の市場規模は、直近10年で約半分に減りました。グラフを見ましょう。
最近は3000億円を少し下回る規模です。経済産業省が公表する資料によれば、もっとも規模が大きかったころは1981年で年間1.8兆円ぐらいだったらしいので、それと比べると今は6分の1ぐらいというわけです。
なぜ、日本人は着物を買わないのでしょう。
これについては、経済産業省が去年3月に公表したアンケート「和装振興のあり方に関する調査」から、いろいろなことが読み取れます。
着物を着ない大きな理由として、
・費用が高い
・着る機会がない
・着るために手間がかかりすぎる
の3つが挙がっています。
着物を買えば1着で10万円以上かかるのが普通ですし、正しく着るためには専門知識を持つ人に手伝ってもらう必要があります。女性なら着物にふさわしい髪型に変えることが多いので、そのための費用も発生します。
着物を着るのは、成人式(20歳になったときの行事)など、特別な儀式のときです。滅多に着ないなら着物を持つ必要はありませんから、儀式のときだけレンタル衣装を使う人も多いです。着物を持っている人でも、着るのは例えば正月だけとか、あるいは何年も着ていない、という人がたくさんいます。日常的には着ません。
同じアンケートによれば、40歳未満の女性で自分の着物を持っている人はだいたい半数。持っていたとしても、1着が普通です。持っている人のうち約8割が、自分で買ったのではなく、親や親戚から買ってもらったり、譲ってもらったりしたのだそうです。
着物文化を楽しみ、守っていくには、お金が必要ですね。
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経済産業省 公表資料(日本語)
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000401.pdf
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/wasou_shinkou/pdf/001_03_00.pdf
東レ経営研究所 公表資料(日本語)
http://www.tbr.co.jp/pdf/trend/tre_113_02.pdf